プロフィール
RPAのアンチサイトを見ると
- 20年前からある技術を「ソフトウェアロボット」と言い換えたに過ぎない
- VBAを組めない人間が、VBAを組めない人間に売っている
- RPAは部分最適に過ぎない。効率化には全体最適(業務の整理・見直し)が必須
とあります。
私自身はSIベンダー側の人間なので、辛口な批評は避けたいところですが、
1.RPAは20年前から存在する
はい、その通りです。
1998年(社会人2年目)にWindowsアプリの画面テストを自動化しました。初期開発の3ヶ月だけで、1000万円ほど、以降のメンテナンスを加えると数千万円のコスト削減を達成しました。
1999年には、Webアプリのブラウザテストを自動化し、こちらも数百万程度の削減効果がありました。
当時、画面テスト用の製品パッケージを用いました。現在のRPAソフトと比べますと、
- 画面操作でシナリオ作成ができるようになった
- ブラウザの画面項目をXPathやCSSセレクタで指定できるようになった
- 自動記録機能が、ある程度、実用に耐えるようになった
- CSV形式でなく、Excelと直接やり取りできるようになった
それ以外は、ほとんど変わらないという印象です。
ちなみに、そのソフトは開発用ライセンスが5万円で、実行ライセンスは無料でした。(だからダメ元で新人に任せたんでしょうけど)
システム会社に属しているとはいえ、まだまだ新人でネットワークもデータベースも基本的な内容しか知らず、プログラムもほとんど作ったことがありませんでした。現在は、素人でもLinuxのインストールができる時代ですから、当時の私より技術レベルは上かもしれません。
ですからソフトウェア技術者にとってはRPAというより、自動テストといった方が馴染みがあります。やっていることは同じというか、もっと複雑です。
システムの高度化、複雑化でテストの重要性は増していますから、2000年以降も自動テストの技術は発展しており、特にWebやモバイル向けはオープンソースで開発されているツールが多いです。
何が言いたいかと申しますと、RPAは高度なソフトウェア技術ではなく、やる気と時間があれば、未経験者でも十分にできるということです。オープンソースを使えば導入費用を大幅に下げることも可能です。
そして、当時の私は誰にも頼ることができませんでしたが、現在はネット上に情報が溢れています。
2.自動化なら、まずはVBAでしょ!
SIベンダーの人間でExcelVBA(Visual Basic for Application)が組めない人が多くいるのは事実です。もっとも、大手SI企業は、営業はもちろん、自社の技術者にVBAを組むことを求めていません。求めているのは、顧客への提案力や、プロジェクト管理、実際に手を動かす協力会社の人をコントロールする能力です。だから「VBAを組めない人間が、VBAを組めない人間に売っている」というのは事実ですが、ツッコミどころとしては、ちょっと違うかなとは思います。
しかしながら、まずはVBAで自動化というのは正解だと思います。
VBAはMicrosoftOfficeに付属していますので、実質的に無料で使えます。ブラウザ操作もInternetExplorerに限ればRPAソフトよりも高度な操作が可能ですし、Excelとの親和性でVBAを超えるものはありません。プログラム言語としても取り掛かりやすい部類に入りますし、私もちょっとしたブラウザの自動操作にはVBAをよく使います。
ただ、いまひとつ安定しないので、わりとエラーが起きやすく、特にブラウザ操作はよく止まります(私が下手くそなだけかもしれませんが...)
無人で長時間行うようなケースでは採用しづらい面がありますが、ちょっとした操作(いわゆる小技)にはVBAはかなり使えると思います。作ったマクロをショートカットキーで起動できるのもメリットです。
3.業務の効率化には「全体最適」の考えが必須
RPAでよく例に出される、Excelの内容をブラウザに入力する操作を考えてみましょう。
現在の業務内容
- 手書きの申請用紙を担当部門がExcelに入力
- Excel内容を業務システムに打ち込み
- 業務システムの結果をExcelに記入
RPA導入後
- OCRソフトで手書き文書を読み込みExcelに出力
- RPAで業務システムを自動操作
- RPAで出力画面を読み取り、Excelに結果を編集。
RPAとOCRを導入することで、全自動化が可能となります。最近のOCRはAI(人工知能)搭載で、手書きでも高い精度で読み取りが可能です。
しかしながら、もっと良い方法があります。
社内システムを改良
- 申請者が用紙ではなく、入力画面(新設)に申請内容を入力
- 従来の業務システムに入力データを渡す。
- 結果をExcelに編集する機能を追加
こうすることで、RPAもOCRも必要なくなります。しかも最初から申請内容がデータ化されていますので、読み取りミス・Excelへの記載ミスがなくなりますし、申請用紙の準備・保存も不要です。これが本来の完全自動化です。
ところが、実現しようとすると、システムを変更するのに、時間と労力とお金がかかります。
企画書の作成、社内調整、予算の確保、情シス部門への依頼…
入力マニュアル作成、社内アナウンス、運用サポート…
情シス部門が全部引き取ってくれるのなら良いのですが、それはそれで情シス部門との調整が待ってます。
もしあなたが、業務全体を見直して変更できる権限と、対応するシステムを作るための十分な予算をお持ちなら、業務を再設計されることをお勧めします。高い効果が得られるでしょう(全体最適)
しかし、権限も予算もお持ちでない場合、業務全体の改善は難しいでしょう。そうした条件下では、自分たちの範囲内で業務を効率化するしかありません(部分最適)
(頑張って、全体最適に向けて社内を巻き込むという道もあります。もっとも業務を最適化した結果、あなたのお仕事がなくなってしまう可能性もあります。状況を見て判断してください)
部分最適の場合は、現場レベルでの改善になりますから、予算もほとんど期待できませんし、専任技術者を手配することもできません。その代わり、失敗しても大きな損失にはなりませんし、社内で責任を問われることもないでしょう。RPAは安く、小さく始めるのがコツです。